『秒速5センチメートル』

新海誠という監督さん含め、前知識は一切ありませんでした。ただ、Twitterのトレンドワードに挙がっていたというだけで、NHK BSプレミアムでやっていたのを録画して観てしまったのです。 なんだこの切なさメガトン級の爆弾は。今劇場でやっているといった作品ではないので、ほんのちょっとだけネタバレ気味で行きますが、本作は「これまでの人生で、最も好きだった人と一緒にいることができなかった者達へのレクイエム」ですわ。ここまで思春期のお膳立てが完璧、且つその後の凋落ぶりがはっきりしている例は恐らくレアなんだと思いますが、ともあれ人を本気で好きになったことのある者にとっては、程度の差こそあれ古傷が疼くような内容であることは間違いないでしょう。 でもね、タカキ君のバカラのガラス細工のような孤高且つ繊細なメンタリティを持ってる人というのは、そうはいないと思います。あそこまで一途で、どうして添い遂げられないのか、適当な相手で妥協してしまうのか、正直そこが不自然に感じられます。まぁね、いるよこういうヤツ。自分がどれだけイケていて、恵まれているかに無自覚なの。ストイックでカッチョよく... Read More | Share it now!

『ゴーン・ガール』

ほとんど劇場で映画を観ることがないんですが、たまたまそういう機会がやってきたとなると、是非とも自分の好きなジャンルを観たいなと思うわけです。世の中的には、男性向きとしては『アメリカン・スナイパー』一色というタイミングだったのですが、自分としては極上の虚構に酔いたいと思い探したところ、まだギリギリ本作をやっている劇場があったので、わざわざ都心に出向き、席数50ちょっとのちっさい劇場で観てきました。 皆さんはデヴィッド・フィンチャーという監督をご存じでしょうか? SF界で既に古典となる初作、ジェームズ・キャメロンによるアメージングな2作目というハードルの中、『エイリアン』シリーズの3作目で鮮烈なデビューを飾って以降、トラウマ必須の『セブン』、『ファイト・クラブ』『パニック・ルーム』など、とにかく男のハラハラ欲・マッシヴ欲を存分に満たす怪作を世に送り出してきた人です。この人の作品というだけで無条件に観る価値がある、というのが私見です。 で、本作ですが、行方不明になった妻を公開捜査で捜す、というプロット自体は問題ないとして、まぁこれほどまでに観ていない人に説明のしづらい... Read More | Share it now!

『プリデスティネーション』

イーサン・ホークといえば、確か『トレーニング デイ』の後に脚本家業を優先させたが故にユマ・サーマンに愛想を尽かされたんじゃなかったっけな…という記憶がありましたが、実際最近表舞台ではだいぶ鳴りを潜めていたように思えます。で、別に特段彼を観たくてチョイスしたわけではなく、正直観るまでは存在すらも知らなかったんですが、原作があのハインラインとのことで、『スターシップ・トゥルーパーズ』に大いに萌えた身としては、駄作は有り得ないだろうと。結果的には大いに満足した作品でした(監督もテイストも全然違いますが…)。 全編に亘りタイムパラドクスがテーマとなっていますが、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』から筒井康隆の『笑うな』に至るまで(どんなチョイスの仕方だ…)タイムトラベルものは数あれど、この飛び道具感は半端ではありません。 時空を自在に超えられるエージェントである主人公。ミッションを帯びてジャンプした先で、数奇な生い立ちを持つ青年の話を訊くことになる…。この話がまぁ長いんですわ! おいおいこのまま終わりまで突き進んじゃうんじゃないかと思うほどに。まぁでも内容が面白いので引... Read More | Share it now!

『STAND BY ME ドラえもん』

本人は特にお金出してまで…と思っていた作品なのですが、同僚が「大人のための映画だ」と強烈にプッシュしていたのと、娘たちに「何か観たい映画ある?」と訊いたら「プリキュア」と返ってきたので、そりゃ勘弁してくれと思い強引に本作に連れて行った次第です。観る前は、別にわざわざ3Dにすることもねぇだろと思っていたのですが、タケコプターのリアル体験ができただけでこりゃもう3Dの価値ありだなと。4才の次女は、既にこの場面で「パパ、こわい…」とベソかいてました。すんげぇ迫力です。 毎年のようにやっているドラえもんのシリーズと違うのは、あちらがキャストや基本プロットを使った創作ストーリーなのに対して、本作は原作のエピソードをベースにしている点です。事前情報によると、原作にあった7本の話を再構成して作り上げたそうなんですが、この脚本が実に巧い。訴求ポイントは大きく2つあって、「のび太としずかちゃんの恋の行方」と「のび太とドラえもんの絆」なんですが、そのために原作のエピソードをほんっとに「美味しいとこ取り」してるんですね。後者に関しては、ネタバレするまでもなく、あの原作の6巻~7巻の一連のエピソ... Read More | Share it now!

『スプライス』

ヴィンチェンゾ・ナタリという監督をご存じでしょうか。その名前に聞き覚えがなくても、『CUBE』と聞いて「あぁ、あれか!」とピンと来る人はいるでしょう。それほど衝撃的な体験でしたし、冒頭のシーンは以降様々な作品でネタとして(ある意味「切り株系」のニューウェーブの出発点?)、そしてなによりあの作品から、「シチュエーションスリラー」なるジャンルが確立されたのではないかと、個人的には思っています。以降、滅多に劇場に行くことのない自分も、彼の作品だけはなるべくスクリーンで観るように努めてきました。しかし、本作に関しては存在を知るのが遅過ぎて、間に合わなかったのです。というか、比較的寡作の部類に入る彼ですが、デビューが衝撃的過ぎて、作品出す度にどんどん知名度が落ちて行ってるような気がするんですが…。 とある製薬会社のバックアップを受けながら、新薬の基となる素材の研究を進めるカップル。研究方針で会社との齟齬が判った時、彼らは秘密裏に「新種」の生産を進めようとする…。プロットとしては「ありそう」な感じなのですが、エイドリアン・ブロディ扮する彼氏と、サラ・ポーリー扮する彼女との、新種に対す... Read More | Share it now!

『オール・ユー・ニード・イズ・キル』

封切りからだいぶ経つので、もうやってないかと思ったんですが、なんとかまだやっている劇場を探し出して観てきました。原作となった日本の漫画は未見なんですが、なぜか勝手に脳内で「きっと大友克洋作品とシンクロするものがあるに違いない」という認識をしてしまったのと、とにかく口コミでの評判がやたら良かったのとで、これは絶対にアタリだと踏んでいました。結果として、やはり大当たりでした。 SFは何を観ても同じ感想を抱くのですが、これほど「プロット」が重要なジャンルは他にありません。プロットで作品の価値が先ず半分決まります。本作における「時間の繰り返し」というプロットは、SFにおいては基本中の基本、ベタ中のベタであり、あまり詳しくない自分でさえ、小説・映画・テレビドラマなどで幾度となく体験してきたものだと言い切れます。しかし、他に抜きん出て巧いなと思うのは、主人公とそれ以外の人間とが繰り返す時間が「経験の蓄積の上に成り立つもの」と「ただ一度きりのもの」であるという違い(これ自体を扱った作品はいくらでもある)を前提としつつ、主人公とヒロインとをごく自然に惹かれあう関係に仕上げていくところです... Read More | Share it now!