YAMAHA “mx61”

なんでも出せる鍵盤として、近年使っています。ライブでは往々にして、2段スタンドの上段に「飛び道具」としての鍵盤(これが近年では waldorf の “blofeld”)、下段にオールマイティな鍵盤をセッティングするんですが、先代は KORG の “microSTATION” でした。使い勝手、音色のクオリティやバラエティなどにまったく遜色はなかったんですが、唯一の難点はミニ鍵だったことです。まぁ判ってて買ったんですが、ピアノとしてしっかり弾く場合に、どうしても窮屈なのは否めませんでした。
そこで、リリースからかなり年数が経って市場価格も下がっていた本機に白羽の矢を立てたというわけです。購入時、本体と専用ケース(mx61のロゴが入っていてカッコいい)、そしてX型スタンドの3点セットで6万円しなかったです。残念ながらシーケンサまでは内蔵されていないので「オールインワンシンセ」と呼ぶわけにはいかないのですが、レイヤ、スプリットに対応して、音色が豊富(1,000以上)。そしてフル規格鍵盤にも関わらず軽量(5kg未満)、さらに本体色で白が選べるということもあり、決めました。
実は本機、自分にとって長い鍵盤人生で初めてのYAMAHA製シンセなのです。まぁ、無意識に避けていたことは否めません。というのも、自分がシンセサイザーをやり始めた時代のYAMAHA機といえば、例えば “DX7s”。これは、当時プロがこぞって使っていたDX7Ⅱをとてもじゃないけど買えないという貧乏学生が、スプリットモードを犠牲にして泣く泣く買うような機種でしたし(自分としては、同時に2音色出せないというのはバンドをやるには致命的だと思って、完全に範疇外でした)、”DX21″ だとどうにも廉価版臭を否めませんでした。また、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった某TK氏がプロモーションに噛んでいた”EOS” シリーズが苦手でして、正直「あぁ、このメーカーは素人向けにはオモチャを提供する方針なんだな」と思ってたのです。というわけで、ファーストシンセは KORG の “DS-8” でしたし、その後 同社 “M1” に移行、その後もオールマイティ機としては KORG か米国 ALESIS製を概ねチョイスしていました。が、恐らく近年「なんでも出せる」デジタルシンセでは、メーカ間での優劣というのはほとんどないんです。というわけで、30年近くシンセを触ってきて、満を持してのYAMAHA機となったのです。
使ってみた感想ですが、ソツがないですね。スペックは購入価格を考えれば(いや、それを考えなくても)十分以上ですし、とにかく「使える音」が豊富です。「ピアノ」だの「オルガン」だの「ストリングス」だのといったカテゴリごとに準備されている音色の数がハンパないですし、基本的にはその中から演奏曲に応じてプリセットを選ぶだけで事足ります。個人的には、この手のデジタルシンセで「音色制作を楽しむ」というのは「ない」と思っています。これは、世の中にPCM音源が出回り始めた頃から感じていたことですが、生音のシミュレーションがかなりの精度でできてしまうシンセでは、音色は作るものではなく「ちょこっとチューニング」するものです。音色作りを楽しみたいのであれば、今であればアナログモデリングシンセを使うのが筋でしょうね。現に、自分はそういう方針でAMシンセとデジタルシンセを1台ずつを、普段のセッティングにしています。
あと、サイズの割に本当に軽いので、これはスタジオ練を頻繁に行うような人にとっては助かると思います。ちなみに、軽さといえば4オクターブ版の “mx49” の方がさらにベターなんでしょうし、そちらばかりが巷でレビューされていた印象があるのですが、ピアノやオルガンなどでバッキングをするシーンや、カラフルな曲で切り替えなしで複数音色出したい場合などを考えると、5オクターブあった方が断然いいです。4オクターブでスプリット設定なんて、使いづらいでしょう。というわけで、よほどの理由がなければこちらをオススメします。

